Nano Insight Japan

【日本電子】
生命科学に貢献し、製品の品質管理に役立つ電子顕微鏡の日本電子 〜クライオ電子顕微鏡によるたんぱく構造解析、走査電子顕微鏡の使い易さスループットを追求した品質検査〜

2018年1月29日

elionix

科学振興・工業立国を目指して、1947年に電子顕微鏡を開発した日本電子株式会社 (JEOL) は、高分解能電子顕微鏡の開発で2016年のnano tech 大賞特別賞を受賞した。その卓越した電子顕微鏡技術を活かし、たんぱく質の構造解析など生命科学/ライフサイエンスへ貢献するクライオ電子顕微鏡がリリースされた。一方、構造や形状の観察に多用される走査電子顕微鏡の使い易さを追求して、品質検査に使える高スループットを実現した。

1. たんぱく分子を氷に埋め込み観察するクライオ電子顕微鏡CRYO ARM™ 300/200

JEOLのnano tech 2018展示の目玉の一つが、たんぱく質の構造解析や創薬開発に役立つことが期待される『クライオ電子顕微鏡』である。 2017年のノーベル化学賞はJacque Dubochet、Joachim Frank、Richard Hendersonの3氏に贈られた。その業績の名称は、「溶液中の生体分子を高分解能で構造決定できるクライオ電子顕微鏡法の開発」であった。3人の役割はHendersonは電子顕微鏡の分解能/本体性能を高め、Dubochetはたんぱく質を氷に閉じ込める試料作製技術を考案し開発した。Frankはたんぱく質の構造解析を行うソフトを作り単粒子解析法の礎を築いた。これらの3つの技術が揃ったことでたんぱく質の電子顕微鏡観察・構造解析に成功した。

図1:氷包埋した試料

たんぱく質の分子は、20種類のアミノ酸(大きさ0.2 nm)が、数十から2万個以上、立体的につながってできている。たんぱく質の機能はその構造で決まり、狂牛病(BSE)は健常な人や牛の体内にも存在するプリオンというたんぱく質の構造が一部違っていたことが解明されている。。創薬の開発には、対象とするたんぱく質の構造にマッチした最適なデザインの開発が目的となり、たんぱくの構造を知ることこそが重要な開発のための情報源となる。従来、たんぱく質の構造解析はX線回折によることが多かった。しかし、前処理である「結晶化した試料作製」には多くの時間とリスクを要する課題を持っていた。。これに対してクライオ電子顕微鏡による構造解析では、たんぱく質や細胞を結晶化をせずに氷の内にとじこめ、−160〜270℃の極低温で観察する。図1では被験試料を閉じ込めた氷が電子顕微鏡観察用グラファイト支持膜の孔に埋まっている。

氷の中には多数のたんぱく分子が様々に異なる方向を向いて閉じ込められている。そこで、クライオ透過電子顕微鏡 (TEM) は電子線入射方向から見た2次元画像を取得し、多数の様々な分子を直接的に観察・撮影を行う。得られたデータを単粒子解析法等を用いて3次元に構造の可視化を行う。クライオ電子顕微鏡が注目される契機となった最新技術には「撮像技術の変化」がある。画像取得には、従来のシンチレーションカメラに代わり近年は、高感度かつ高速撮影が可能な電子線直接露光CMOSカメラが実用化され、分子を圧倒的なシャープさと高速露光での記録ができるようになった。単粒子解析法では方向の異なる数十万個の分子の観察データが必要であることから、そのデータ量は大きくビッグデータの解析になる。

図2:タバコモザイクウィルスの構造解析

 電界放出型クライオ電子顕微鏡CRYO ARMTM 200及びCRYO ARMTM 300は、JEOLがこれまで培ってきたコールドFE電子銃やインカラム型Ωフィルター、高圧電源の安定化技術等々の高分解能透過電子顕微鏡技術をフルに活かし開発された。装置化にあたり、多数のデータを操作者の時間や負担を低減しながら取得のできるよう、最大12個の試料を保管できる自動試料交換機構をつけた。観察はスケジューリング機能を駆使して数日間に及ぶこともあり、電子顕微鏡の長期間の安定動作、試料の低温環境維持、微細なドリフトを低減することに努めた。図2は構造観察例である。

 クライオTEMに期待されるのは結晶化できないたんぱく質(膜たんぱくなど)の、生体内に近い状態での構造解析である。このため創薬メーカの関心が高い。JEOLは名古屋大学藤吉好則客員教授と共同で、クライオ電子顕微鏡の「受託分析サービス」を開始した。高額な装置を購入することなく、低コストで試料の分析などのサービスが受けられる。

2. 高スループットの走査電子顕微鏡JSM-ITシリーズ

 クライオ電子顕微鏡が技術の先端を行く装置であるのに対し、もう一つの目玉は今までにないシステムを搭載しスループットを向上させ、汎用性があり、使いやすく、現場の品質管理用にもなる走査電子顕微鏡JSM-IT (InTouchScpeTM) シリーズである。

 JEOLの走査電子顕微鏡 (SEM)には、簡単な操作性のW-SEMと高分解能のFE-SEMの2つのシリーズがある。W-SEMにはもう少し分解能が欲しい、FE-SEMにはオーバースペックで操作に気を遣う、というユーザの声があった。JSM-IT500シリーズはこの声に応え、統合ソフトでハイスループットにするとともに高画質を実現した現場用のSEMである。産業界へのSEMの普及を狙う。

 形状観察のSEMに元素分析のEDS(Energy Dispersive X-ray Spectrometer, エネルギー分散形X線分光器)をつけたW-SEM/EDSの利用者は、鉄鋼・金属、食品、繊維、プラアスチック、機械・電気などの業界に広がる。使用目的は、新規開発品評価が20%で、品質確認・品質評価・出荷/受入検査の日常業務が80%を占める。検査の日常業務では、検査結果の迅速な工程へのフィードバックが求められる。

 検査工程は、CCDカメラで分析する視野を探し、その視野でSEMによる観察、異物のEDS分析、検査結果のレポート作成と進む。しかし、使う装置が独立し、工程間に壁(Border)があった。連続した操作 (Borderless Operation) に向け、すべての操作が一つのソフトで行えるシステムを開発した。

 図3はJSM-ITシリーズの操作をディスプレイ画面で示している。左の大きな表示領域にはCCDカメラで捉えた光学像が表示され、視野を探し分析領域を決めたところである。右上の小さな表示領域には試料の全体像が表示されている。分析領域が決まると大きな表示は分析領域のSEM画像になり、右上の表示は分析領域の光学像に変わる。SEM画像を拡大・観察ののち、EDS分析を行うと右下の表示領域に元素分析結果が示される。観察・分析結果は一元管理され、レポート作成に用いられる。

図3 ディスプレイ画面で示したJSM-ITシリーズの操作

 

図4:分析条件でのSEM観察(左:JSM-IT500HR、右:一般のW-SEM)

このようなシステムを搭載した結果、1視野で30%、2視野で35%、10視野で53%のスピードアップとなった。さらに、高輝度電子銃を搭載したJSM-IT500HRを開発して高画質の観察・撮影ができるようにした。一般的なW-SEM/EDSではSEM観察の電子電流は1pA、EDS分析は1nAとそれぞれの最適電流とする。分析条件の1nAで観察すると画像がぼやけてしまう(図4右)。しかし、JSM-IT500HRでは1nAの分析条件でも鮮明な画像が得られる(図4左)。このため、観察と分析を切り替えても、条件変更が不要となり、作業性が著しく向上する。

 ユーザは、装置の性能には満足しているが、使い方で苦労している。JSM-ITシリーズでは使い方を改善し、1〜2日のトレーニングで使えるようになった。JSM-ITシリーズのよさは、展示される実機、動画で紹介するアプリケーションで確かめられるだろう。

おわりに

 以上、今回の目玉とする展示品を紹介したが、JEOLは様々な観察・分析装置を開発し、これらを有機的に活用すれば多面的な観察・分析が出来る。また、観察・分析機器の要素技術を展開して特徴ある製造装置が産み出している。同時開催の「3D Printing 2018」には3Dプリンターで利用する金属粉末の形状・元素分析を簡単に行えるコンパクトな卓上走査電子顕微鏡 JCM-6000Plus NeoScope™ 、微粉の球状化や、ナノ粒子合成を行える高周波誘導熱プラズマナノ粒子合成装置 TP-40020NPSが展示される。

 

 (注)図は全てJEOLから提供された。

小間番号:6J- 08

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