出展者特集記事
2024年1月16日
材料創成によるイノベーションに向け、ナノテクノロジー・材料のデジタルトランスフォーメーション(DX)が本格化している。さまざまな分野にソリューションを提供してきた株式会社JSOL(以下、JSOL)は材料解析ソリューションJ-OCTAとDigimatをnano tech 2024で紹介する。J-OCTA、Digimatは“ソリューション群”であり、ニーズに応えて成長を続けている。J-OCTAは、対象を開発当初の樹脂などのソフトマテリアルから、バイオ材料や創薬・製剤に広げた。さらに、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)の機能も加え、分子構造からの物性予測(順問題)のほか、物性値から分子構造を予測すること(逆問題)などにも対応した。複合材料の特性予測から始まったDigimatは成形品の製品評価にとどまらず3Dプリンティング工程で発生する残留応力や反りの解析ができるようになった。nano tech 2024では、J-OCTA、Digimatを中心に、材料設計のためのDXソリューションを展示し、セミナー会場で「材料設計のためのDXソリューションのご紹介」と題する講演が行われる。
材料の開発はさまざまなスケールでの物質合成や現象解析・特性評価の組み合わせである。1 nmレベルなら量子力学を用いて化学反応などを、10 nmレベルなら分子動力学で分子運動などをシミュレートする(図1)。J-OCTAの共通のプラットフォーム上に、スケールに応じ、様々なシミュレーションソフトが用意され、それらを連携させることにより、さまざまな物性やミクロ構造の評価が可能である。
図1: マルチスケールシミュレーション
J-OCTAの主な対象は、樹脂やゴム、生体分子・薬剤、接着剤、ナノコンポジット、コロイド溶液、化粧品、Liイオン電池、太陽電池、有機ELなど、ソフトマター中心に幅広い。データサイエンス機能も搭載し、MIや、AI創薬もサポートする。 例えば、異なる粒径の活物質6種類、バインダー1種類が含まれる電池電極材料の固体/粉体層の圧縮成形プロセスのシミュレーションでは、薄膜形成時の圧力と空隙率を評価して先行事例(実験、計算)とよく一致する結果が得られた(図2)。 また、ドラッグデリバリーシステム(DDS、薬剤送達)に用いる脂質ナノ粒子の設計では、ミクロな化学構造に基づくシミュレーションから任意の分子が作る膜、粒子の形状や運動性を評価することができる (図3)。
図2: 電池電極材料の圧縮成形
図3: 薬剤送達脂質ナノ粒子の生成
物性値から分子構造を予測するデータサイエンスの例では、分配係数10.0となる化合物を求めるため、既知の1297個のデータを学習させた。分子構造の種となるグラフ構造と、官能基に相当するツリー構造を用意し、逆問題として解いてターゲット候補の分子構造を求めた。得られた分子構造の分配係数をJ-OCTAで求めると9.8となり、ターゲットとした物性とほぼ合致していた(図4、参考文献:Int.J.Mol.Sci.,22,2847,(2021))。
図4: データサイエンスを用いたターゲット材料の導出
ファイバーを加えてプラスチックの強度を上げ、ゴムの添加物でタイヤの性能を上げることが行われている。Digimatはこのような複合材料の特性をマトリクス、インクルージョンそれぞれの材料物性とミクロ構造(ガラス繊維などインクルージョンの繊維配向、含有率)の情報から予測する(図5)。予測可能な特性としては、応力-ひずみ曲線などの機械特性のほか、熱伝導、電気伝導、遮蔽率がある。 Digimatは樹脂流動解析ソフトなど外部ソフトによる成形工程解析の結果を利用して、製品設計・試作・評価・設計改良と続く製品設計のループを回すことができ、最適設計で実機の試作評価に入ることができる(図6)。
図5: 複合材料の特性予測
図6: 成形プロセスを考慮した構造解析
また近年、Additive Manufacturing(3Dプリンター)を対象にしたDigimat-AMが加わった。材料モデリング、構造解析と組み合わせてプロセス解析を行い、ソリや内部応力などが求められる。あるいは、ツールパスなどに起因する異方性を考慮した構造解析を行うことで最適な加工法を見出したりすることができる。挿入図の成形品には応力分布が色分けして示されている(図7)。
図7: 3Dプリンターの 構造解析
JSOLは、2024年2月2日(金)12:45から シーズ&ニーズセミナーA(東4ホール)会場で「材料設計のためのDXソリューションのご紹介」と題する講演を行う。マテリアルズ・インフォマティクスやシミュレーションをはじめとしたソフトウエア、コンサルティング・サービスなどを紹介し、ミクロからマクロまでのシミュレーション技術に加えて、データサイエンス技術を活用したソリューションの説明がある。
JSOLは、材料開発にさまざまなソリューションを提供する。材料解析のJ-OCTA、Digimatは多数のサブプログラムから構成され、解析対象は多岐にわたる。多数のnano tech 2024来場者が、展示ブース、セミナー会場を訪れて、材料開発DXに有用な情報を取得することを期待する。
(注)図はJSOLから提供された。
小間番号 : 5P-15