出展者特集記事
2024年1月19日
DKSHマーケットエクスパンションサービス(MES)ジャパン(株)は、スイスのグローバル企業「DKSHグループ」の一員であり、2021年8月にDKSHジャパンを分割して設立した会社である。そのルーツは、1865年(慶応元年)スイス使節団が日本を訪問した時に作られたシイベル・ブレンワルド商会で、外資系貿易商社の第一号である。nano tech 2024第23回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議には例年通りヒールッシャー(Hielscher Ultrasonic GmbH:ドイツ・ベルリンにて1991年設立の強力超音波発生機器の専業メーカで、DKSHMESジャパン(株)はその日本総代理店)が世界に誇る強力超音波分散装置のシリーズを出展する。
ラボ用と生産工業用のシリーズがあり、工業用では装置単体での出力最大値は16,000Wで、システム化することにより60,000 Wも可能という。これまでの「超音波分散装置では2,000W以上は不可能」という常識を大きく覆す。24時間フルパワー連続運転・空気中での運転可能という特長もある。
ヒールッシャー超音波分散方式は他の分散方式(高速せん断,高圧噴射、ミル型等)と比較してナノ粒子化が容易であり、ナノスケールにより性能向上・用途増加した分野として、インク・顔料、セラミックス材料、コーティング材料、電池材料、電子材料(フィラー)、研磨材料、化粧品材料があげられる。nano tech 2024では特に、使用済みリチウムイオン電池から金属の回収と植物からオリーブオイル等抽出の応用例を紹介する。
図1: キャビテーションによる衝撃波
電気超音波変換の出力により、対象液中で振動子を高速に振動させることで、液中にキャビテーションを発生させる。キャビテーションとは、振動子の超音波の動きに液の圧縮と減圧の動きが追いつかず、減圧時に空洞が発生し、空洞内に蒸気・ガスが取り込まれた気泡になる状態である。この気泡が圧縮時に圧壊し消滅する際に、膨大なエネルギーの衝撃波を発する。瞬間的には1000気圧以上、5000℃、400 km/h以上のジェット流が発生し、この衝撃波が周りにある対象物に影響を与えるとされている。図1は円柱形の振動子の周囲に高温の衝撃波が発生している様子を示している。
図2に、この超音波で発生するキャビテーションによる分散とそれ以外の手法による分散との違いを示す。前者は「浸食分散」と言われ、周囲からナノ粒子が外れる過程を継続することで、効果的にナノ粒子を作っていく。後者は「分裂分散」と言われ、凝集状態の粒子が数個に分裂することを繰り返す。
ナノ粒子は、ミクロン粒子とは異なる表面特性、相互作用を持っており、反応性・吸着性・光透過性・発色性・流動性の向上など、様々な材料特性の変化をもたらす。強力超音波分散はこうしたナノ粒子の特徴を容易に引き出す分散法といえる。
図2: ヒールッシャー強力超音波による分散と他分散方式との分散状況の比較
超音波分散装置の生産工業用として出力500 ~16,000 Wの6モデル、ラボ用として出力50~400 Wの4モデルを揃えている。生産工業用装置はポンプ送液による循環処理でスケールアップすることにより、60,000 W出力も可能という。従来の常識の2000 Wの出力上限をはるかに超える高出力を可能とする鍵は、95 %という電気超音波変換機の極めて高い変換効率にある。これまでの超音波分散装置の変換効率は30~60 %といわれ、残りが熱となるため冷却装置の負荷が大きく高出力用には向かないとされていた。しかし、ヒールシャーの装置は冷却の必要がなく、空気中で24時間連続運転ができ、故障のリスクも小さい。
ラボ用では発熱がないため非常にコンパクトで2.1 kg~3.5 kgと軽量であり、イーサーネットによるPC接続が標準である。図3、図4、図5に、ラボ用、生産工業用、スケールアップの各装置写真を示す。
図3 : ラボ用装置 図4 : 生産工業用装置 図5 : 工業用スケールアップ装置
3.1 使用済みリチウムイオン電池から金属の回収
リチウムイオン電池は電気自動車、ノートパソコン、携帯電話などに大量に使われている。その製造には、レアアースその他の部品材料入手可能性の確保や採掘にかかる環境コスト削減のため、そのリサイクルが求められている。図6にバッテリー廃棄物からの金属の超音波浸出工程を示す。ヒールッシャーの強力超音波装置は現行回収方法の乾式冶金法、湿式製錬法と比較して以下の利点を有している。
欧州では既にヒールッシャーの48,000 W超音波処理装置が、電機メーカに導入され、その効果が実証されており、この流れは次第に拡大していくものと考えている。
3.2 超音波を用いた植物からオイルや生理活性物質の抽出
ヒールッシャーの強力超音波は、植物抽出への適用でも効果を発揮する。20 kHzの低周波高出力超音波を溶媒中の植物材料からなるスラリーにあてるときに起こる音響キャビテーションと溶液の超音波振動により、植物細胞の崩壊と破壊が促され、ポリフェノール、フラポノイド、ビタミン等の生理活性物質やオイルを効率よく抽出することができる。強力超音波による植物抽出の、数ある他方式と比較した特徴としては、高速な抽出、高い収率、広範囲の化合物に適用可能、低コスト、そして環境に優しい、即ち、溶媒とエネルギーが節約でき、廃棄物も少なくて済むことが挙げられる。
欧州ではオリーブオイルの抽出に強力超音波の使用がトレンドになっている。果肉からのオイルの抽出に上記特徴が発揮されるのに加え、葉から抽出されるフェノール化合物とビタミンを濃縮することでオリーブオイルの栄養価を高め、ハーブやスパイスを加えた超音波処理で、風味あるオイルが出来る。
最後に、DKSHMESジャパンはヒールッシャーの技術により人類が初めて手にする強力な超音波とこれが生み出すキャビテーション現象を利用して、材料のナノ領域で起こる未知の事象を発掘/活用する夢、更には機能性材料の創出・生産工程改善などSDGs化の夢などにご来場者をお誘いする。欧州では既に使用済みリチウムイオン電池からの金属回収と植物からオリーブオイル抽出に強力超音波装置導入が進んでいる。DKSHMESジャパンは、ご導入希望者とは、無償貸出小型ラボ機の活用など、順を追った導入計画や、ヒールッシャー製超音波分散装置本体の前後に繋がる付属装置製造の国内企業選定などのご相談をしながら事業を進めると同社の担当者は語っている。
図6 : バッテリー廃棄物から金属の 超音波浸出
(注)図はDKSHマーケットエクスパンションサービスジャパンから提供された。
小間番号 : 4K-16