Nano Insight Japan

【三菱鉛筆】
筆記具で培った技術で難分散材料の微分散に挑む三菱鉛筆
~ボールペンインクの顔料分散から独自分散技術への展開~

2018年11月29日

三菱鉛筆

図1:フィブリル化したPTFE

優れた製品を作り上げるために培ってきた技術をナノテクノロジーの視点で見直したら、異業種の製品に活用され、新製品が生まれる。鉛筆の芯を作るため三菱鉛筆はカーボンに関する技術を磨いてきた。一方、三菱鉛筆の主力製品が鉛筆からボールペンに代わって久しく、2017年の売上に占める割合は、ボールペンが50%を越え、以下にサインペン、シャープペンシルと続き、鉛筆は7%程度と第4位に過ぎない。ボールペンにはインク調合や先端部の精密加工など従来の鉛筆とは異なる技術が必要である。以前のボールペンインクの着色剤は染料が主流であったが、染料による筆跡は耐水性や耐光性に劣るという問題があった。同社は早くから耐水性・耐光性に優れる顔料の採用を進めており、これが独自の超微粒子分散技術の開発に結びついた。ボールペンインクではナノオーダーまで微細化された顔料を長期間安定に分散させておくことが求められる。三菱鉛筆はこの技術を応用して作製した分散体を持ってnano tech展に今回初めて臨む。nano tech 2019ではPTFE、SiC(炭化ケイ素)、フェライト(磁性粉体)の各分散体や、鉛筆芯の製造技術から発展したカーボン製品などが出展される。ここでは三菱鉛筆の技術で作製された分散物の特徴やカーボン製品の概要を紹介する。

(1)PTFE分散体

PTFE微粒子を一次粒子にまで分散すると、分散過程で受ける剪断力によりPTFEが繊維状に引き伸ばされてフィブリル化することが多い(図1)。このフィブリルが絡まって凝集物を生じ易く、PTFE微粒子をきれいに一次分散するには難しい課題となっている。ところが三菱鉛筆は、PTFEをフィブリル化させることなく、さまざまな溶媒中に30から60wt%の高濃度で、安定かつシャープにナノ分散せることに成功した(図2、図3、図4)。提供されるPTFE分散体の平均粒子径は、グレードにより0.1から0.3 µm、分散媒には有機溶剤のNMP、DMAc、DMF、IPA、PGMEA、トルエン、MEKに加え水もラインアップされており用途に合わせた選択が可能である(表1)。    
PTFEの低誘電率である特徴を活かしたハイエンドプリント基板、低摩擦性や撥水・撥油性を活かした塗料への幅広い用途展開が期待されている。塗料に添加した場合、ナノ分散されたPTFEが塗膜全体に均一に分布して凝集物の無い平滑な塗布面が実現され、また、PTFE微粒子が塗膜内部にも均一に分散するため、摺動により塗膜が削れても長く良好な撥水性が保持されるなどの効果が確認されている(図5、図6)。三菱鉛筆のPTFE分散体の粒子は径が光の波長より小さいので、透明に近い塗膜が得られることも同社のPTFE分散体を使うメリットである

図2:三菱鉛筆のPTFE分散体

図3:沈降し難く安定なPTFE分散体

図4:PTFE分散体の粒径分布

表1:PTFE分散体のラインアップ

図5:PTFE微粒子含有塗布膜の表面写真

図6: 撥水・撥油効果の持続性

(2)SiC(炭化ケイ素)分散体

SiCは非常に硬度の高い材料であり研磨剤に使われているが、新たな用途として無電解Ni複合メッキへの利用も期待されている。Niマトリックスに分散して存在するSiC微粒子によりメッキ膜の硬度(耐摩耗性)が向上する。Ni複合メッキは、メッキ液にSiC微粒子を分散させてメッキすることでSiCがメッキ層に取り込まれることを利用する。SiC微粒子がメッキ層に均一に取り込まれることが非常に重要である。三菱鉛筆は、顧客のメッキ条件検討の便宜のため、粒子径100 nm~10 µm程度までの分散体をラインナップしている(図7)。粒子径200 nmのSiCを用いた例では、メッキ膜に添加した場合に動摩擦係数が0.30、また、研磨剤として用いた場合に研磨粗さ(Ra)が35 nmという結果が得られている。

図7: SiC微粒子を添加したNi複合メッキの表面SEM写真

(3)フェライト(磁性粉体)分散体

磁性粉体の分散は難易度が高いとされるが、三菱鉛筆はSiCに引き続き磁性粉体の分散にも成功した。分散処理前の状態は数10 µm程度の大きな凝集物の塊であったものが、独自の分散技術により平均粒子径0.3 µm程度の微粒子にきれいに分散される(図8、図9)。微分散されることで磁区が微細化され磁気的特性が変化し、飽和磁化、保磁力ともに低下する。保持力の小さい磁性粉体には磁気シールド用塗料などの用途が期待されている。

図8: 磁性体分散体のSEM写真および磁気特性

(4)カーボン製品

三菱鉛筆では、鉛筆芯の製造技術を発展させ、カーボンと樹脂バインダーの組成や焼成条件を自在に制御することによりさまざまな特性のカーボン製品の開発に取り組んでいる。微細な多孔性を利用したエアブッシュの他、超音波診断センサ用インピーダンス調整部材、コイルバネなどファインなカーボン製品が紹介される。  以上の詳細はnano tech 20191のブース番号5E-01に展示されるので是非足を運んで頂きたい。

図9: 磁性粉分散体の粒度分布

小間番号:5E-01

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