Nano Insight Japan

【住友金属鉱山】
近赤外線吸収材料(CWO®)が拓く新応用分野

2019年1月8日

住友金属鉱山

住友金属鉱山株式会社(SMM)は、六方晶タングステンブロンズのナノ微粒子が優れた近赤外線吸収特性を示すことを世界で初めて見出し、同社が有する独自の粉体合成技術や超微粉砕技術、高度分散安定化技術を用いて、安価かつ高性能な近赤外線吸収材料(CWO®)を新規に開発・製品化した。本製品を住宅や車両の窓部材に適用すると、採光性を犠牲にすることなく室内の温度上昇を抑制(空調負荷を軽減)できるため、日射調整フィルムや、各種グレージングのみならず、農業用被覆資材(図1:グリーンハウス用途)等で実用化が進む。近年では、そのユニークな光学特性(選択波長吸収特性)や優れたエネルギー変換特性(光熱変換特性)に注目が集まり、農業や電子・光学デバイスなどの幅広い分野で新たな材料の市場形成が期待されている。SMMは、Nano tech 国際ナノテクノロジー総合展には初出展となるが、総合展が目指す超スマート社会の中で、同社が開発した新素材が果たす多彩な応用展開の可能性を議論して頂きたい。以下にこの新素材の高い近赤外線吸収能力と開拓しつつある応用分野の一例を紹介する。

1)新素材“CWO®”の基本構造と物性

CWO®は、酸化タングステン(WO3)にセシウム(Cs)を添加することで得られる導電性微粒子であり、2004年にSMMが独自開発した新規の近赤外線吸収材料である(Patent:CWO®を用いた近赤外線遮蔽材料及びそれらを用いた機材はSMMの特許登録品である)。近赤外線吸収の基本原理は、導電性ナノ微粒子が示す局在表面プラズモン共鳴を起源とする。WO3は単斜晶構造を有する絶縁体であるが、ペロブスカイト構造(MWO3)のMサイトに相当する位置が規則的な空隙となっており、これらの空隙の中心に第3元素を様々の割合で導入することが出来る。添加元素Mのイオン半径が大きくなるに従って、立方晶、正方晶、六方晶(CWO®)へと結晶対象性が変化するが、結晶内でM元素が解離することで(M++ e-)、結晶に導電性が付与され、電子のポラロン吸収によって、各特有の近赤外吸収特性を発現する。

2)CWO®の日射遮蔽特性

可視光透過型の近赤外線吸収材料としては、ITO(In2O3:Sn)やATO(SnO2:Sb)が広く知られている。図3に、太陽光スペクトルに対する、近赤外線吸収微粒子分散膜の透過プロファイルを示す。太陽光成分は、紫外線(UV)、可視光線(VIS)、近赤外線(NIR)に大別され、そのエネルギー比率は、UVが7 %、VISが47 %、NIRが46 %となる。太陽光のスペクトルを参照すると、800 - 1200 nm付近のNIRには大きな強度があるが、ITOやATOではこの部分を十分に除去し切れていないのに対して、CWO®では選択的にこの部分を吸収しつつ、同時に十分な可視光透過性(VLT)を確保していることがわかる。更に、CWO®やLaB6(SMMで独自開発・製品化されたNIR吸収材料)では、単位重量あたりの吸収係数が大きいため、使用する材料量が非常に少なくて済む。同じ日射遮蔽係数を得るのに必要なナノ微粒子の量(透明体の単位投影面積あたり)を比較した結果を図4に示す。CWO®やLaB6では、ITOやATOに比較して、はるかに少ない量で、同等の日射遮蔽効果を持つことが分かる。CWO®の場合には、VLT 70 %程度の膜の形成に必要な量は、ITOの12.0g/m2に対して、CWO®は1.5g/m2、LaB6では僅か0.33g/m2と、ITOに比べて実に1~15%の量でも有用な日射遮蔽効果が得られる。このように希薄な分散密度で効果を奏することはコスト的に大きなアドバンテージとなる。また、ITOやATOは、原料ソース(In等)の資源問題(高コスト)のみならず、第2類特定化学物質指定(※発がん性に関連する特別管理物質)等の工業的な課題を多く抱えており、CWO®やLaB6はこのような課題を解決するものである。

3)CWO®の応用展開

CWO®やLaB6が有するユニークな選択波長吸収能や高い耐候性は、太陽光に限定されず、ハロゲン光や固体レーザー光等の人口光源もその対象となり、様々な応用展開が期待される。以下に、その応用例の一部を紹介する。

 

3-1)光質変換用途(NIRフィルター・認識技術)

NIR吸収材料の光学用途は多岐にわたり、現代生活の中では様々な用途に使われている。

CCDやCMOS等の撮像素子(半導体イメージセンサー、図5)は、様々な光に対して高い感受性を持つため、太陽光をはじめとする多成分光源下では、人間の視覚では感知できない虚像(フレアやゴースト等)を出現させる。例えば、カメラモジュールでは、VISのみならず、人間の目には見えないNIRまでも認識するため、撮像画像は人間が見たままの色彩にはならないが、CWO®を使用したNIRカットフィルターをCCDやCMOSに装着、光の波長帯から余分なNIRを吸収・カットすることで、自然な色彩を生成し、私たちの目と同様の光の描写ができる。また、上記とは逆に、CWO®を被写体(光照射体)に適用することで、ナイトビジョンシステムや印刷物等の識別制御(NIR認識技術)に応用することも可能となる。

3-2)光熱変換用途

CWO®は、局在表面プラズモンによる大きなNIR吸収と高いVLTを合わせ持つことから、近年では光吸収に伴う加熱(光熱変換)用途の開発が進んでいる。図6に、CWO®のVLTに対する光熱変換特性を示す。ここでは、純水に分散したナノ微粒子を対象とし、ソーラーシミュレーターからの光(疑似太陽光)を照射したときの水蒸気発生量と温度上昇量を計測している。CWO®を含有する水は、高VLT領域(80%付近)において、水蒸気発生量、温度上昇量共に、ITOやATOの実に3~4倍にも達する。透明かつ着色可能な自己発熱材料として、各種エンプラや、工業用繊維、塗料へ用いられる他 [防曇樹脂、防寒・速乾繊維(図7)、防カビ塗装等]、CWO®のプラズモン加熱が作り出す局所的な高温反応場を水熱合成や樹脂合成・加工などの化学反応に利用した、「光触媒」としての応用[デジタル印刷(図8)、熱シュリンクフィルム(図9)、レーザーアブレーション等]も期待されている。

CWO®は、上記のような光学部材に適用可能な優れたNIR吸収能に加えて、無機材料ならではの高い耐候性を有しているため、特に、車載用途などの過酷な使用環境下でも特性維持が求められる製品カテゴリーでの採用が進んでいる。Nano tech会場では、CWO®、 LaB6の詳細説明と共に、上記応用の具体例の展示説明をしており、多くの来場者に本ブースに立ち寄っていただき、この材料の応用展開についてご議論頂くことを期待する。

小間番号:5L-08

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