Nano Insight Japan

【産総研ナノセルロースフォーラム】
いま注目の新素材「ナノセルロース」 は研究開発段階から実用化段階へ移り 国内、海外でサンプル出荷が行われる とともに、アプリケーション開発・製 品化が進む

2020年1月9日

NCF

ナノセルロースフォーラムは国立研究開発法人産業技術総合研究所が運営するコンソーシアムで、ナノセルロースをいち早く実用化・普及させるために、製造事業者、利用事業者、研究機関の情報共有、意見交換、研究開発連携を進めるためのオールジャパンベースの場としての役割を果たしている。この数年間でナノセルロースを取り巻く国内、海外の状況は大きく変わっており、製造事業者が増加するとともに、アプリケーション開発も活発になり、最終製品へ適用される例も増えてきた。一方、セルロースナノファイバーのみを対象とする日本に対し、海外勢はセルロースナノクリスタル、バクテリアナノセルロース、セルロースフィラメントなど、用途に応じて最も適切なものを選択するという傾向がある。公的研究機関が運営するコンソーシアムとして、中立的な立場からナノセルロースの現状を紹介する。

1. ナノセルロースは性状も特性も多種多様

ひとくちに「ナノセルロース」といっても、形状、性状、特性ともさまざま。国内では「セルロースナノファイバー」が有名だが、これ以外に「セルロースナノクリスタル」「バクテリアナノセルロース」もあり、海外で進むアプリケーション開発では、これらの中から、性状、特性、価格によって最も適切なものが使われている。またナノセルロース(繊維の径が3~100ナノメートル)よりも少し太い「セルロースフィラメント」も海外では広く用いられており、今後、製造事業者間の競争が激しくなると予想される。ナノセルロースフォーラムのブースでは、セルロースナノファイバー以外のナノセルロースについても紹介しているほか、サンプルの入手先の情報も提供している。さまざまなナノセルロースの情報を一度に入手したい人にとっては、有益な機会になるだろう。

図1:ナノセルロースの特性

ところでナノセルロースには優れた特性がいくつかある。日本ではこの特性を活かした製品が販売されているが、この特性がすべてのナノセルロースに当てはまるものではないことは、意外と知られていない。例えばよくいわれる「鋼鉄の5倍の強度で1/5の軽さ」という特徴は、一部のセルロースナノファイバーだけに当てはまる性質ということ。セルロースナノファイバーの単繊維をセルロースミクロフィブリルというが、この引張強度は3.0GPaで、炭素鋼(SS400)の0.45GPaと比べると約5倍(図2)。一方でセルロースミクロフィブリルの比重は1.5g/cm3、炭素鋼の比重は7.8g/cm3なので、1/5の軽さといわれる。しかし機械解繊だけで製造した繊維径の太いセルロースナノファイバーにはこれだけの引張強度はなく、セルロースナノクリスタルやバクテリアナノセルロースも同様。一般的に繊維の引張強度は、繊維の径が小さいほど大きいということなので、樹脂などの補強目的でナノセルロースを使う場合は、選択を誤らないようにしたい。

図2:鋼鉄の5倍の強度の意味

このほかに、ガスバリア性や細孔制御性も、膜やフィルムに成型した場合の話で、そもそも成型条件によっても異なる。このようにナノセルロースは多様であるがゆえに、特性についても当てはまるものと当てはまらないものがある。ブースでは特性について詳しく説明しているほか、産業技術総合研究所の研究職員に技術的な相談をすることも可能とのことなので、ぜひ利用したい(事前予約制)。

2. セルロースナノファイバーの実物を展示

セルロースナノファイバーという言葉は聞いたことがあるが、目にする機会は少ない。今回の展示会では、代表的なセルロースナノファイバー2種類を展示しており、実際に触れることができる。さらに数量限定でサンプルも配布しているとのことなので、セルロースナノファイバーを見たことがない人にとっては、貴重なチャンスといえよう。

代表的なセルロースナノファイバー

図3:代表的なセルロースナノファイバー

セルロースナノファイバーのサンプル

図4:セルロースナノファイバーのサンプル

    

ところでセルロースナノファイバーは国内で約20社が製造・供給しているが、各社とも原料、製造方法が異なる。しかしその違いが明確に数値化されているわけではないため、利用者にとってわかりづらい。最近、物性データが記載されている場合もあるが、規格がないため、各社が掲載しているデータも同じ条件で測定したのかどうかわからない。結局はサンプルを入手して分析するしかないとのこと。なお各社とも性状は大きく異なるため、材料として用いるにあたっては、異なる物質と考えた方がよいらしい。しかしこれは、セルロースナノファイバーを使ってうまくいかなかった人にとっては朗報ともいえる。つまりA社のセルロースナノファイバーでうまくいかなかったとしても、B社のものを使えば、うまくいく可能性があるということ。展示会場で情報を入手してほしい。

3. 海外のナノセルロース研究開発動向

近年、ナノセルロースをめぐる状況が大きく変わっているのは、日本国内だけではない。海外でも製造事業者が増加し、アプリケーションの開発競争が激化している。さきほど触れたように、海外ではセルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタル、バクテリアナノセルロース、セルロースフィラメントが目的に応じて使い分けられており、セルロースナノファイバー一辺倒の日本とは様相が異なる。また日本では、樹脂に混ぜて高強度・軽量複合材料を製造し、自動車、家電製品、住宅分野で実用化するのがアプリケーション開発の本命と言われているが、海外はバイオメディカル、エレクトロニクス、エネルギー、環境などの分野での適用を目指した研究開発も広く行われている。

図5: 海外のナノセルロースの研究開発動向(イメージ)

会場には「世界のナノセルロース関連研究拠点マップ」が展示されているが、これは必見だ。どの国で、どんな研究開発が行われているか、一目でわかる。特に注目したいのは、中国での応用研究の高まりだ。100以上の大学が、さまざまなナノセルロースを使って何を目指して研究を進めているのか、ぜひ会場で確かめてほしい。

(注)図は全て産総研ナノセルロースフォーラムから提供された。

小間番号:AT-04-1(セルロースナノファイバー特別展示)

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