Nano Insight Japan

【JSOL】
複合材物性予測ツールのJSOL
~研究開発から「モノつくり」まで幅広い活用を期待~

2020年1月22日

JSOL

企業や研究機関向けにさまざまなCAEソリューションを提供しているJSOLは、nano tech 2020において、材料開発や、複合材料を使った「モノづくり」をマルチスケール解析と3Dイメージでサポートする各種のツールを紹介する。今回の主な出展は、材料のナノ領域における物性やメカニズムを予測するJ-OCTA、複合材料の物性を予測するDigimat、現物の画像データから3Dデータを生成し物性まで予測するSimpleware Softwareである。J-OCTAの最新版には機械学習による物性予測(MI)のオプションもあり、今回はこれも併せて紹介される予定である。  このようなツールは化学系企業を始め、自動車、電機関連企業の材料研究開発部門での導入が進みつつあり、今後は製品設計のような「モノづくり」の現場により近い部門での活用が期待されている。nano tech 2020ではツールの経験が少ない現場技術者へのアピールにも力を入れたいという。ここでは各ツールの特徴や用途などを簡単に紹介したい。

1. J-OCTA 〜材料の物性やメカニズムを分子シミュレーションで予測〜

J-OCTAは、材料に使われるポリマーなどの分子構造(化学式)などを入力すると、それらの3次元での振る舞いを分子動力学や第一原理などの分子シミュレーション技術に基づいて計算し、材料の静的・動的な特性を予測するソフトである。材料の物性はミクロな領域の特性が組み合わされてマクロな物性として発現すると考えられる。このソフトは、材料物性の基本となるミクロな領域に着目して構造を求め、それにより材料としての物性を予測するものである。解析の対象となる領域の大きさはオングストロームから数100ナノメートル程度である。
例えば、ポリマーに無機フィラーを添加する場合、ポリマーの分子構造とフィラーの結晶構造を入力すると、フィラーとポリマーの界面構造を描くことができる(図1)。また、ブロック共重合体や相溶しないポリマーを混合した場合の平衡相分離構造も、ポリマーの分子構造に基づいて予測することができる(図2)。さらに、ポリマーの分子構造を変えたり、フィラーの表面官能基の濃度や種類を変えた場合も、入力条件を変更するだけでそれらの違いを予測できることは言うまでもない。

シリカとポリアミドの界面構造

図1: シリカとポリアミドの界面構造

トリブロック共重合体の相分離構造

図2: トリブロック共重合体の相分離構造

J-OCTAで予測できる物性は、密度、凝集エネルギー、溶解度パラメータ、ガラス転位温度、弾性率、自由体積、ガス透過性、熱伝導率、粘度、粘弾性、誘電率、相分離、吸着エネルギーなど多岐にわたっている。解析対象には、上記のフィラー界面構造やポリマーの相分離構造以外に、一般的な熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂やゴムの架橋構造、ナノコンポジット、接着剤、塗膜、電池材料など多くの例が挙げられている。
J-OCTAのユーザーにとって有難いのが、オプションとして提供されている構造物性相関(QSPR)による物性予測機能である。化合物の分子構造をグラフ構造に変換し、それと実験データなどから得た物性を関連付けて、対象材料の物性を予測する機能であり、これによって物性予測に要する計算時間は時間オーダーから秒オーダーへと大幅に短縮される。一例として、5種類のポリマー(図3)についてガラス転位温度の予測値と実測値を示す(図4)。さらに、J-OCTAの最新バージョンでは機械学習(深層学習)を用いた学習~予測機能の提供を始めており、これによってユーザーの手元にあるデータを用いた、予測精度向上のためのカスタマイズが可能となる。

QSPR法による物性予測に使われたポリマーの例

図3: QSPR法による物性予測に使われたポリマーの例

QSPR法によるガラス転位温度の推測

図4: QSPR法によるガラス転位温度の推測

2. Digimat 〜マルチスケール解析で複合材の物性を予測して製品設計にまで利用〜

Digimatは複合材料のマクロなスケールの物性を予測するツールである。このツールでは、複合材料を構成する個々の材料物性および構造を入力することで、これらが組合わされた複合材料としての物性が予測される。このソフトの目的とするところは主として応力-ひずみ等の機械物性の予測であるが、熱伝導率や電気伝導率の予測も可能である。例えば、ガラス繊維強化樹脂の場合、マトリクスとなるポリマーの物性、ガラス繊維の物性、ガラス繊維の配置(配向、濃度)などを入力して、複合材料としての物性が評価可能である。
ガラス繊維を含有するポリマーを射出成形すると、得られる成形品に繊維配向の分布や、厚さ方向でもスキン層とコア層のような局部的な特性の違いが生じることがある。Digimatには射出成形の流動解析など、プロセスシミュレーションとの連携機能が組み込まれており、そこで得られる情報を用いることで、繊維の配向分布、さらには繊維とポリマーの界面物性までを考慮した、より実際の製品に近い構造解析が可能である(図5)。

Digimatの解析ワークフローの例

図5: Digimatの解析ワークフローの例

 Digimatを使うにあたって複合材料の構成成分の物性が必要になるが、実際の開発現場に全ての材料データが保有されているとは限らない。またこれらを実際に測定したり、収集する負担も大きいものになる。それらのニーズに対し、多くの素材メーカーの協力を得てDigimat-MXというデータベースが整備されており、材料の品番から容易にDigimatの入力に必要なデータを入手できるようになっている。
 Digimatには複合材料の物性予測を逆に使うという使い方も提案されている。これはリバースエンジニアリングというべきもので、複合材料を入手しその構成成分の物性を知りたいという場合がその一例である。フィラーや繊維などの無機材料と異なり、ポリマーの方は、モノマー組成が分かったとしてもグレード違いの材料物性を得ることは困難である。実測された複合材料の物性に合うようにDigimatでポリマーの物性を推算することが可能である。
 さらに最近のバージョンでは、樹脂を用いた3Dプリンタの造形工程で生じる変形や残留応力を解析するための機能なども追加されており、ソリューションの幅が広がってきている。

3. Simpleware Software〜現物の画像データを3Dデータに変換して物性を予測〜

 Simpleware Softwareは既存の成形品や材料などから3Dデータを生成するソフトである。3D化には断層写真などが利用できる(図6)。例えば、複合材料や多孔質材料などの材料内部の情報をCTスキャンやFIB-SEMを用いて取得してコンピュータ上で3D構造を再現し、繊維配向や空隙分布などを解析することができる。
さらに、有限要素シミュレーションに用いるメッシュを生成でき、実際にシミュレーションを行うことで弾性率などの機械物性、熱伝導率、多孔質内の流動など、材料の各種特性を評価することが可能である。さまざまな形式のCADデータの読み書きに対応しているので、他ソフトとの連携も容易である。
 以上はこれらのツールの持つ機能の極一部に過ぎない。他にもさまざまな機能があり用途はユーザーの目的により大きく広がる。これらを存分に活用すれば、実験回数を大幅に削減して開発効率の向上が期待できよう。取扱いにはある程度のスキルを要するのでセミナーなどを受講して理解を深めることが望ましい。nano tech 2020ではミニセミナーの開催(4回/日)が予定されている。是非ブース(1W-S32)に足を運んでセミナーに参加されるようお勧めする。

図6 各種の画像データを3Dデータに変換してシミュレーションまで実行

図6: 各種の画像データを3Dデータに変換してシミュレーションまで実行

(註)図はすべて株式会社JSOL提供

小間番号:1W-S33(MI・材料シミュレーション特別展示)

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