Nano Insight Japan

【名古屋大学未来エレクトロニクス集積研究センター】
汎用の分光分析装置で上位機種の精度を実現 ─ ベンチャーを創業し中小企業の支援も開始へ ─

2023年1月24日

SND

名古屋大学 未来材料・システム研究所 未来エレクトロニクス集積研究センターの原田俊太准教授は、半導体などの非破壊検査に使う分光分析の精度を大幅に高める「超解像技術」をnano tech 2023で紹介する。比較的導入しやすい数十万円の分光分析装置を用いても、数千万円の上位機種並の精度が得られる。高価な装置については、これまでを上回るさらに高い精度を実現できる。今春にベンチャーを創業し、非破壊検査の高度化支援を行う事業を開始する。
 非破壊で半導体などの製品検査を行うため、検査対象物に光を入射し、放射されたり吸収されたりする分析光の波長を分解して検査する分光分析技術は広く利用されている。しかし対象物から出る分析光を検出する電荷結合素子(CCD)の数以上にデータを増やすことはできない。その結果が測定誤差につながる。
 原田准教授は、画像を鮮明にするために用いられる人工知能(AI)の機械学習の数学的手法である「ベイズ超解像」を分光データの解析に応用し、スペクトルデータの解像度を向上させることに応用した。

ベンチャーを創業し分光装置高度化のサービスを開始

これまでの研究で、例えばラマン散乱スペクトルであれば、構成するラマン散乱とレイリー散乱で測定データをほぼ連続的につなぎ、ノイズに埋もれていた二次ラマン散乱のピークを測定データの中から抽出することができた(図1、2)。ラマン分光装置を皮切りに、電子線エネルギー損失分光装置(EELS)、X線光電子分校装置(XPS)でもベイズ超解像が有効であることを確認した。

図1: ラマン分光で現れる信号

図2: 超解像処理した成果

原田准教授は、もともとパワー半導体や発光ダイオード(LED)に用いる炭化ケイ素(SiC)など材料の研究開発を手がける。より正確に材料の物性を評価するため、自らが分光装置の高精度化に取り組んできた。今年4月か5月に分光装置の超解像を手がけるベンチャーを創業する。材料開発者の立場から、分光装置ユーザーのニーズに合った技術を提供する。

図はすべて名古屋大学 未来材料・システム研究所 未来エレクトロニクス集積研究センターから提供されたものである。

小間番号 : 2T-28

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