Nano Insight Japan

【スギノマシン】
湿式微粒化装置スターバーストの紹介とセルロースナノファイバーの応用展開 -各種高機能材料の高純度分散・微粒子化を実現する湿式分散装置の提供と バイオマスナノファイバーの応用による材料特性向上に期待-

2023年1月24日

SND

株式会社スギノマシン(以下スギノマシン)は、蒸気機関車のボイラー熱交換器チューブ内に付着するスケールの除去装置(チューブクリーナー)メーカーとして、1936年に大阪で創業した。1945年には拠点を富山県に移し、チューブクリーナーを原点に高圧水技術、空気圧技術、金属加工技術、計測・制御技術を発展させ、裾野は広くなくとも無くては困る技術、最上のもの創り技術を目指して6つの超技術「切る」、「削る」、「洗う」、「磨く」、「砕く」、「解す」を展開する地方から世界に羽ばたくグローカルニッチ企業*)である。2011年には、一層の社会貢献とカーボンニュートラルへの寄与を果たすべく、「砕く」、「解す」の技術を活かしてセルロースナノファイバー(CNF)を開発し材料メーカーとしての歩みを始めた。今やスギノマシンの提供するバイオマスナノファイバー(BiNFi-s:Biomass Nano Fiber made by SUGINO)は、機械解繊方式のCNFとして確固たる地位を占めるに至っている。
*)グローバルとローカルを合わせた造語

 nano tech 2023では、電子材料や電池など高精度・高純度ナノ材料の製造に活用が期待される湿式微粒化装置(Star Burst®)と、各種グレードのBiNFi-sの特性や応用事例が紹介される。以下に出展の概要を記すので情報収集の参考にして頂きたい。

1.湿式微粒化装置スターバースト(Star Burst®

(1)Star Burst®について

Star Burst®は、最高245MPaに加圧した原料同士をチャンバー内で超高速に衝突させて微粒化させる装置でBiNFi-sの製造にも使用されている。分散媒は水に限らず有機溶媒も使用可能である。標準仕様である斜向衝突チャンバーの場合、加圧された原料が両側のノズルから相対速度マッハ4の高速で衝突する(図1)。ノズルの開口径はラボ機の場合100 µmという狭さであり、ここを通過する処理液には衝突による衝撃力に加え強い剪断力も加わり原料が微粒化される。実際の装置構成では、プランジャータイプの加圧ポンプ(増圧機)を2台用いて脈動を抑制し、粗大粒子の除去フィルターや、発熱した原料を冷却する熱交換器なども設置される(図2)。Star Burst®の技術の主たる核は増圧機とチャンバーにある。増圧機は硬質微粒子を含むスラリーの加圧・送液にも耐えられるもので、シリンダーや逆止弁の材質、パッキン類の材質・形状などにさまざまな工夫が取り入れられている。この種の増圧機としては世界で最も信頼性が高く安定稼働可能な製品であるという。チャンバーはノズルがダイヤモンド製で原料の衝突が均一になるよう精密な加工が行われている。
Star Burst®とビーズミルなど他方式の微粒化装置との大きな違いは、全ての原料に例外なく剪断力や衝突力を加えることができる点にある。他方式では粗大粒子の残存確率をゼロとすることは難しいが、Star Burst®では原料の100%が分散ゾーン(チャンバー)を通過するので粗大粒子の残存を皆無にでき、シャープな粒度分布が得られる。さらに、原料同士の衝突で微粒子化されるので、他方式のような異物混入の懸念が極めて小さいことも特長である。Star Burst®にはラボ機から大型機までラインアップされている。大型機でもチャンバーノズル径は350 µmと極小サイズであり、ラボ機の運転条件をそのまま大型機に適用して同等の微粒化結果が得られる。

図1: 斜向衝突チャンバー

図2: Star Burst®の装置構成

(2)極細スリットチャンバー

前項で紹介した斜向衝突チャンバーに加え、より微細化の可能な極細スリットチャンバーが開発された(図3)。特長は長いスリット部を有すること、スリット全体がダイヤモンド製でコンタミが非常に少ないことである。スリット幅は数十µmであり斜向衝突チャンバーのノズル径100 µmより遥かに狭い。原料がここを通過する際に強力な剪断力を長時間受けることになり、微粒子化が効率的に進行する。チタン酸バリウムの例では、標準の斜向衝突チャンバーを用いた場合、メジアン径92 nmの微粒子が得られたのに対し、同条件の極細スリットチャンバーでは82 nmとさらに微粒子化された。また狙いが同じ粒子径であれば、斜向衝突チャンバーに比べ処理時間の短縮化も可能である。
スギノマシンでは、極細スリットチャンバーがコンタミネーション(異物混入)の課題を解消したナノレベルの微粒子化に適していることから、高純度で高機能を要求される電池材料や電子材料の開発に貢献できると期待している。同社は微粒化テストセンターを設けており、基礎的な条件探索から試作、量産に至る顧客の処理依頼に応じるという。

図3: 極細スリットチャンバー

2.BiNFi-s

スギノマシンではセルロースに限らずCMC(カルボキシメチルセルロース)、キチン、キトサン、シルクなどのバイオマス原料もStar Burst®のウォータージェットでナノファイバー化し、BiNFi-sとして提供している。従来からセルロースナノファイバー(CNF)には樹脂やゴムの補強効果が期待されているが、BiNFi-sにはそれ以外にも粒子の分散安定化および固化(ケーキング)防止、オイルのゲル化、水溶液の増粘、塗料塗膜補強などの効果も認められており、スギノマシンではこれらの応用展開に力を入れている。供給形態は、水分散物に加え樹脂添加に適した乾燥品もラインアップされている。nano tech 2023では各種のBiNFi-sやその応用例を出展するが、本稿では、ゴム補強材およびポリプロピレンとの複合化の用途例に絞って簡単に紹介する。

(1)ゴム補強

BiNFi-sを天然ゴムに添加するとカーボンブラック(CB)とは異なる補強効果が発現する。その効果はBiNFi-s量5部(ゴム成分100に対して5)程度でもCB量40部添加よりも高い補強性を示し、特に低歪み域においてCBより大きな効果が見られる(図4)。天然ゴムにBiNFi-sを添加するにはラテックスに水分散BiNFi-sを混合するだけで良く、ラテックスを原料とするゴム製品にBiNFi-sを添加することは容易である。タイヤのように固形ゴムの混練を行う場合は、上記の方法で作製したBiNFi-s添加ラテックスを乾燥させたマスターバッチで対応が可能という。重いCBに比べ軽量なBiNFi-sを少量用いることでタイヤが作れればタイヤ軽量化への多大な寄与が期待されよう。

図4 BiNFi-s添加天然ゴム(NR)の引張試験 IMa:長繊維BiNFi-s、FMa:短繊維BiNFi-s

(2)樹脂補強(フィラー)

乾燥BiNFi-sをポリプロピレン(PP)に対し1 wt%添加し二軸混練して複合体を作製した。分散性は良好で凝集物は見られず、引張伸びと破断応力が向上する「タフ化」効果が付与された(図5)。これはBiNFi-sの存在によりPPの球晶サイズが小さくなったことと、BiNFi-sが樹脂の破断伸展を抑制したためである。また、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)に添加すると、BiNFi-sが炭素繊維間を架橋することで母材と炭素繊維の界面接着性が向上し、CFRPの疲労寿命が延長される。

図5: BiNFi-sを添加したPP

Star Burst®は多大な可能性を秘めたユニークな分散装置であり、nano tech 2023ではラボ機が展示される。本稿で紹介した以外のチャンバーも多数あり、多用な目的での活用が期待される。またBiNFi-sは樹脂への分散性が良好な乾燥品や濃度10%を超える水分散品なども展示される。さまざまな応用分野での興味深いデータも開示されるので是非ブースを訪問しご確認頂きたい。

(註)図はすべてスギノマシンから提供されたものである。

小間番号 : 1G-07

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