Nano Insight Japan

SCSK
材料開発のデジタルトランスフォーメーションを支援する MI(マテリアルズ・インフォマティクス)プラットフォームCitrine Platform・ 材料開発シミュレーションGeoDict

2023年1月25日

SCSK

材料創成によるイノベーション創出を図ろうとナノテクノロジーの研究が進み、環境問題や規制に対応するため材料開発のニーズが高まっている。これに応えるため、データサイエンスや機械学習を活用して材料開発の高速化を目指す、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)が進展した。内閣府の統合イノベーション戦略推進会議は「マテリアル革新力強化戦略」を策定し、マテリアルDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を図っている。nano tech 2023では研究開発DXゾーンを設け、SCSK株式会社が出展する。同社は「夢ある未来を、共に創る」という経営理念のもと、社会が求めるさまざまなITサービスを提供している。製品・サービス分野の一つにモノづくり・設計システムがあり、その中の材料設計・開発ソリューションをnano tech 2023に出展する。人工知能(AI)とデータ構造管理を組み合わせたMIソリューションCitrine Platform(シトリン・プラットフォーム)、メゾスケールでの材料開発を支援するGeoDict(ジオ・ディクト)を紹介し、Citrine Platform活用の一提案としてGeoDictとの組み合わせを示す。

1. MIソリューション Citrine PlatformはAIを効果的に活用し材料開発の高速化を実現する

Citrine Platformは、2013年に設立されたMIプラットフォームの開発を事業とする米国Citrine Informatics社の製品である。SCSKは2022年7月、その日本代理店になった。Citrine Platformは、欧米中心に利用実績を有する実用段階のMIプラットフォームである。SCSKはnano tech 2023を日本に広める機会にしたいという。最終日の2月3日には米国から担当者が来て、展示ブースで来場者の質問に応じる予定である。
Citrine Informatics社は材料開発で効果的にAIを活用するため、シーケンシャル・ラーニングの手法を提唱する(図1)。初期学習データを取り込み、AIモデルを作成して、設定された探索領域で候補材料のスコアを算出し、スコアの高いもので検証実験を行う。この結果を用いてAIモデルを更新し、探索を行う。このサイクルによるAIモデル⇔実験の相乗効果で、お互いを少しずつ改善しながら最適解に向かう。このアプローチにより従来の研究開発手法に比べ50-70%ほど少ない実験数で目標となる材料特性の達成が可能となる。Citrine PlatformはAIモデルの作成~候補材料のスコア付けまでを一貫して行えるソフトウェアである。初期データは最小25からスタートが可能で、少ないデータで始められることはCitrine Platformの大きな特徴となる。
これに加えてCitrine Platformは、材料に適したデータ管理、ノーコードUI(ユーザーインタフェース)でのモデル作成、ドメイン知識の実装機能、逆問題解析+候補探索機能といった特徴を持つ。適用範囲は、電池材料、電子材料、金属・合金、セラミックス、ゴム・エラストマーなど多岐にわたり、化学品、自動車、電池メーカーなどからの引き合いが多い。

図1: Citrine Platformの効果的にAIを活用するシーケンシャル・ラーンング

2.材料開発支援ソフトGeoDictはモデル形成から特性解析まで一貫して行えるCAEソフト

GeoDictはドイツのFraunhofer 研究所からスピンオフしたMats2Market GmbHが開発した、メゾスケールでの材料開発を支援するソリューションである。SCSKは2013年11月から日本国内の代理店になり、リチウムイオン電池、排ガスフィルター関連など、多数の顧客にサービスを提供してきた。リチウムイオン電池の中のリチウムイオンの挙動解析、排ガスフィルターの捕集効率や流量解析などを行なっている。そのほかに、ガラス繊維強化樹脂などの機械強度解析やデジタル岩石学にも用いられている。
GeoDictは、ミリからミクロンサイズの材料を主な対象とし、分析・解析に必要なミクロ構造のモデルを形成から、幾何構造分析、特性導出まで一貫して行う材料設計・開発支援プログラムである(図2)。解析モデルの生成方法は2つあり、1つめは実在材料のFIB-SEMなどで取得した画像から生成、2つめは材料のパラメータを入力して仮想構造を作成である。幾何形状の分析では、解析モデルで生成したものに対して、空隙率やパーコレーションパスなどの計算ができる。特性導出では、リチウムイオンの挙動を解析して電池の充放電シミュレーションや屈曲度、電気/熱伝導、構造解析なども行える。モデルの中でパラメータなど変えた時の特性への影響を見ることにより、材料改良の指針を得ることができ、目標とする特性の材料設計・開発が進められる。GeoDict は材料をモデル化して特性を解析し、目標特性の材料に近づいて行く、CAEソフトである。

図2: 構造生成から分析・特性性能評価までワンパッケージで解決するGeoDict

3. Citrine PlatformとGeoDictの連成による材料探索―MIソリューション Citrine Platformの活用案

Citrine Platformは材料開発にAIを活用するプラットフォームで、その舞台の上ではさまざまな課題解決が行われよう。材料開発のプロセスに即した使い勝手の良いインターフェースは高く評価され、材料・化学メーカー、自動車・自動車部品サプライヤーなど幅広い業界から引き合いがあって、注目度は高い。ユーザーからの活用法の提案を期待したい。
SCSKは、一つの案としてCitrine PlatformとGeoDictの連成を挙げる。最適な材料選択と最適な製造プロセスの探索において、実験データを使用する代わりにGeoDictのシミュレーション結果を活用する。実験価値の最大化に向け、AIはシミュレーションデータを学習し、シーケンシャル・ラーニングのサイクルにより、反復するごとに最も有望な候補を特定するというものである。
このほか、ミクロな現象とマクロな現象を紐づけし、実現象を忠実に再現していくマルチスケール解析において、Citrine Platformが活用できるのではないかと考える。長さスケールの異なる様々なシミュレーションと連携し材料探索を行うことが可能であろう。来場者からの討論、提案を期待している。

図3: Citrine x GeoDict連成による材料探索―Citrine活用の一提案

(注)図はすべてSCSKから提供された。

小間番号 : 2W-19-07

>>製品・サービス検索はこちら

>>出展者 / 製品・技術一覧はこちら

このウィンドウを閉じる