日揮触媒化成株式会社は、プラントエンジニアリング建設をグループの主要事業とする日揮ホールディングス株式会社のグループ会社の一つである。独自の超微粒子技術を核として、石油精製、ケミカル・環境保全、ファインの3事業分野を有し、触媒やファインケミカル製品を提供する、無機機能性材料モノづくりのメーカーである。
日揮触媒化成は、独自の技術を用いた多くのオンリーワン製品を有し、2025年度のナノテク展(nano tech 2025)では、ファイン事業分野から、新しいナノ粒子を中心に、開発品も含めた4件を展示している。
ここでは展示品の概要とともに、ファイン分野の製品を特徴づける同社のナノ粒子調製技術について、簡単に紹介する。
SnO₂にSbをドープしたATO、ATOを鎖状に連結した鎖状ATO 及び、PをドープしたPTOを開発し(図1)、帯電防止材、熱線吸収材として提供している。鎖状ATOは少ない使用量で導電性を発揮することを目指して開発したものである。ATOは濃青色を示すが、PTOは淡黄色で、フィルム化するとほぼ透明となり、着色がSbドープよりも少ない利点もある。いずれも無機材料で安定しており、タッチパネルや衣類への塗布・混錬等、顧客の用途に対応して最適な材料を提供している。
また粒子径が小さいため、透明性が高く、安定性に利点があることから、窓に貼るシートとして、車の熱線カット等にも応用できるのではと考えている。
図1 :Sb-SnO₂(ATO), 鎖状ATO, PSnO₂(PTO)の形状とその表面抵抗および近赤外反射率
チタニアは光触媒活性を有し、有機材料の劣化を促進するが、日揮触媒化成は光触媒活性を抑制することに成功した(図2左)。このナノサイズのチタニア粒子は、眼鏡用の高屈折プラスチックレンズにコーティングする高屈折率材料として採用されている。高屈折率の基板に塗布しても、屈折率差を低減すること等により干渉縞を生じることがない(図2中)。今般、新たにTiO₂の構造設計により、ブルーライトカット機能を付与することも可能となった (図2右)。
またチタニアの光活性抑制技術は、ディスプレイ用反射防止膜としての用途も生み出した。その他に、光学用接着剤としてチタニアを配合し、接着剤そのものの屈折率を上げていくことも可能であると考えている。
図2 :チタニア膜のコーティングによる干渉縞制御とブルーライトカット機能
様々な金属元素のコロイド溶液を調製する技術を有しているが、ここではAu, Pt, Ag, Pd-Cuの金属コロイド像(図3左)とPd-Cuの触媒活性例(図3右上)、およびAgの抗菌性能を示す(図3右下)。サイズで、均一な分散性と高い表面積を有するため、特定の反応において高い触媒活性を示す。図3では、高活性な触媒として、硝酸分解、COD成分の分解などの機能を示す。また衣類の風合いを損なうことなく、消臭・抗菌性能を付与することが可能で、金属の種類によらず、高い導電性を示し、各種用途の導電材としても使用可能である。
金属コロイド触媒は、環境分野、医療分野、エネルギー分野等々でも高い触媒活性を示すことが知られており、各分野の触媒ニーズを正確に知ることにより、最適な触媒の選択等に寄与できると考えている。
図3 : Au, Pt, Ag,Pd-Cuの貴金属コロイド像とPd-Cuの触媒例、およびAgの抗菌性能
粒子内部が空隙となっている中空シリカは20 nm~サブµⅿで制御された粒子サイズを有しており、世界に先駆けて、100 nm以下の量産化に成功したため、高透明、低屈折率材料として60型以上の大型ディスプレイ等の反射防止フィルム用に採用され、業界標準となっている。今回は粒子径40 nmでも、反射率が60 nmと同等の中空シリカ粒子を開発し、紹介している(図4)。
またサブミクロンサイズの中空シリカ粒子は低誘電率で、軽量であることから、電子回路基板から塗料、樹脂、建材まで、さまざまな応用が期待されている。
図4 : 中空シリカを用いた低反射機能膜
ここでは、日揮触媒化成の中で、製品種の最も多いシリカを例にして、ナノ粒子調整技術を紹介する(図5)。
5nmからミクロンサイズまで粒度分布の揃った材料を調製でき、また中空状、鎖状等の各種形状制御にも対応できる。ディスプレイや化粧品以外に、ハードディスクやスラリーの研磨砥粒として利用され、研磨する材料、或いはサイズによって、色々な形状のものが利用されている。
ナノ粒子としての機能を十分に引き出すには、粒子の表面状態を制御し、有機溶媒等に分散させて提供する必要がある。日揮触媒化成には用途や分散媒に応じて分散させる技術に大きな特徴があり、シリカ以外の無機材料についても多くの知見を有している。
図5 : 日揮触媒化成のナノ粒子調製技術
ご来場の皆様方には、『お客様のニーズを材料に翻訳する』ことをモットーとして無機ナノ材料開発を進める日揮触媒化成の担当者に気軽にお声がけ頂ければと考えている。
小間番号 : 4R-19
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