透明度が高く、大型化可能、さまざまな機能を有し、レーザー核融合開発に資する透明YAGセラミックスが開発された。加えて、サステナブルなマグネシウム化合物が展示される。
出展者、神島(コウノシマ)化学工業株式会社(以下、神島化学)は、1917(大正6)年に岡山県神島で創業し、「無機化学の可能性を追求して顧客満足を第一に」を企業理念として、瀬戸内海に面する香川県三豊市の工場を中心に建材、化成品、セラミックスの3事業を展開する。建材事業では、不燃外壁材などの高付加価値品を製造販売する。化成品事業では、海水由来のマグネシウム化合物を製造販売する。セラミックス事業では、透明YAGセラミックスを中心にレーザー媒質や蛍光体などを製造販売する。1989年にYAG透明セラミックスの合成に成功、JAXAなどに採用されて感謝状を頂き、2025年5月にはレーザー学会から「レーザーセラミックスの製品化と事業展開」の名で“「第17
回レーザー学会産業賞」優秀賞”を受賞した。
一般にセラミックスは陶器のように不透明と思われているが、その原因である光散乱を排除すれば透明になる。
多結晶セラミックスの光散乱源は、表面、気孔、析出物、結晶粒界相、結晶粒界分域である。市販原料を高温で高圧をかけて焼き固める焼結で光散乱源を減らせば透明体は得られるが、レーザー媒質に必要な透明度まで向上させるのは困難である。神島化学は市販YAG(Yttrium
Aluminum
Garnet)原料をAl3+、Y3+のレベルまで分解し、独自の湿式法でYAG粉末を合成し、成形、焼成する製造工程を開発して、レーザー媒質になり得る透明YAGセラミックスの製造に成功した(図1)。
図1. 透明YAGセラミックスの製造フロー
このセラミックスは、レーザーの発光中心となる賦活剤(ドーパント:Nd, Sm, Yb, Cr
など)を添加して、レーザー媒質にできる。さらに大型化・複合化のために、特殊接合技術を開発した。二つのYAGセラミックスの表面を研磨し、加圧・加熱し、拡散接合で接着する。二つのYAGセラミックスはドーパントが異なっても良く、平面接合だけでなく、クラッド接合、目玉接合、円筒の外周接合も可能である。複合化により、寄⽣発振・温度上昇・エネルギーロスの軽減など様々な効果が期待される。
一般に、YAGレーザーにはYAG単結晶が用いられる。単結晶に比べ、多結晶セラミックスは、形状⾃由度(⼤型化・ニアネットシェイプ)が⾼く、⼤量生産が可能で、賦活剤(ドーパント)を均一 かつ ⾼濃度に添加できる。
フュージョン(核融合)エネルギーは、太陽の中で水素原子核が融合してヘリウム原子核になってエネルギーを放出するのを地上で実現しようというもので、究極のクリーンエネルギーとして世界中で研究開発が行われている。レーザー核融合は、核融合に必要な高温・高密度のプラズマを高出力レーザーで生成させようという方式である。高出⼒レーザーでは、大口径で均質なレーザー媒質が求められる。神島化学は単結晶では難しい大口径レーザー媒質の透明YAGセラミックスを提供できる。現状では、120×120×10
mmまでのものが出来ている。いくつものレーザー核融合研究開発機関に、試料を提供し、共同開発を行なっている。
レーザー核融合発電は2030年代に実証実験、2050年代に実用化が期待される未来技術である。神島化学は、その独創的コア技術の早期活用を図り、図2に示すような領域への積極的アプローチを行ない、ユーザーへの開発協力を行なっている。
図2. 透明YAGセラミックスの実用化が期待される用途
透明YAGセラミックスの技術をもとに様々な応用展開が試みられている(図3)。
レーザー用ではレーザー媒質にCr:YAG(Crを添加したYAGセラミックス)を接合して発光させると、Crがある程度光を溜め込んでからその光を放出するので小型でロボットに搭載できるパルスレーザーを作れる。

図3.透明YAGセラミックスの技術を基にしたセラミックス製品
賦活剤にCeを添加したセラミックスと無添加セラミックスを接合した接合LuAGセラミックスシンチレーターを提供し、高輝度光科学研究センターと理化学研究所が、分解能200nmの高解像度X線イメージング検出器を開発した。
また、賦活剤にCeを添加したYAG(Ce:YAG)セラミックスから発せられる黄色の蛍光と光源から出た青の光を足し合わせて白色光を得ることが出来るので、青色LEDの上にCe:YAGセラミックスを貼って白色照明にできる。
TAG (Tb3Al5O12)セラミックスからはファラデー回転を利用して光アイソレータを作れる。
GOS(Gd2O2S)で0.1〜0.5 mmの真球状の緻密質セラミックスを作製し、蓄冷材として超伝導マグネットに使⽤されている冷凍機の最重要部材となった。
緻密質セラミックスでは、高純度化によって酸・アルカリに対する耐⾷性を高めた、⾼純度アルミナるつぼ(Al2O3)が、次世代パワーデバイス基板であるGaN単結晶の育成容器として利⽤されている。
神島化学は、顧客の提案、要望に応え、さまざまな応用に適する素材を作り、顧客に提供しており、nano tech 2026において新たな応用、協業先に巡り会えることを期待している。
神島化学のマグネシウム化合物は海水中のMgを原料として生産されている。製造方法は図4に示す通りで主な原料は海水と石灰、瀬戸内の豊富な海水と、瀬戸内海周辺の山々からとれる良質のカルシウムである。それら天然由来の原料を使用して、1945年から製造開始している炭酸マグネシウムは今でも国内外で需要があり、その他の酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムなどの各種マグネシウム化合物も工業用から医薬用まで幅広い産業に使用されている。図5にその応用例を示す、酸化マグネシウムは合成ゴムの添加剤や、医薬⽤原薬やミネラルサプリメントの原料に用いられている。粒子サイズを制御した水酸化マグネシウムは、有害物質を含まないクリーンな環境型難燃剤としてケーブル被覆材や、電⼦機器材料に使われている。 炭酸マグネシウムは今でも天然ゴムの充填剤として使用されている。
図4.海水からのマグネシウム化合物製造
図5.海水から作られたマグネシウム化合物とその応用
神島化学の詫間工場(香川県)では長年生産活動に伴い排出してきた二酸化炭素を、2030年には排出量をゼロにする目標を掲げ、CO2リサイクルシステムを開発した。この取り組みは2024年グッドデザイン賞BEST100に選出され、2026年には本格的にシステムの稼働が始まる。
神島化学はnano tech 2026展示ブースに技術者を配置し、来場者との討論を通じて新たな応用展開、技術発展が産まれることを望み、多数の来場者の来訪を期待している。
(注)図は神島化学工業から提供された。
小間番号 : 1W-R37
出展ゾーン:Deep Tech ゾーン
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